“命”を全うする育て方と、生き方。

鷹島

九州西北部、
佐賀県唐津市の隣にある鷹島。

主産業は農業と漁業で
中でも畜産が盛ん。
現在約560頭の肉用繁殖牛がいます。
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島で生まれる牛ほとんどの
人工授精を担っているのが、
家畜人工授精師の資格を持つ
大石啓介さん・恵子さんご夫妻。

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啓介さんは、
日本家畜人工授精師協会が主催する
技術発表会(2015年度)で、
全国の家畜人工授精師が参加するなか
最高賞の「西川賞」を受賞。

令和3年度には、
ICTを導入した取り組みによって
夫婦で「ながさき農林業大賞」
農林水産大臣賞・知事賞を
受賞しました。

「去年は年間150頭ぐらいのお産に立ち会いました。
今日もこのあと出産があります。」
大石さんはスマートフォンで
牛のお産の分娩管理をしています。

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「お産前の牛の膣内にセンサーを入れ、
体温の変化を感知すると
スマホに通知が届きます。

それから、
赤ちゃん牛のお布団になる干し草など
出産や緊急時の準備をします。
いちばんは私たちの『心の準備』です。」

以前は、
牛のお産がいつはじまるかわからず
24時間体制で緊急対応に追われることも。

今では、
通知が来てから約24時間以内に生まれるため
時間の調整や準備をしやすくなり、
1日の過ごし方が少しずつ整ってきたそうです。

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もともと動物が苦手で触れず、
畜産の仕事にも関心がなかった恵子さん。

啓介さんが25才、恵子さんが28才のとき
啓介さんの地元・鷹島へUターンし、
家業の繁殖農家を継業。

啓介さんが一心に頑張る姿を見て
「一緒にやりたい」と思うように。
子牛の育児日記をつけるなど
自分なりの工夫を重ねて、
家畜人工授精師の資格も取りました。

「生まれたばかりの
赤ちゃん牛の世話は、
女性の方が向いているかもしれない。
食欲や便の色や形を観察したり、
子育てとおんなじです。」

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恵子さんは4人のお母さん。
食用の牛を育てる仕事について
子どもたちにはこう伝えているそう。

「この子たちはお肉になるために生まれて、
お肉になるまでが一生。
生まれてきた意味を
遂げさせないといかんとよ、って。

ちゃんと送り出すのが
私たちの役割だと思っています。
成人する子どもを見送る気持ちですね。」

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恵子さんたちは
一般的には安楽死を選ぶような
奇形などの牛にも餌をやり、
育てています。

「生きようとしているから。」
と、見せてもらった奇形で盲目の牛は、
恵子さんがよく出入りする牛舎の
見通しの良い場所で暮らしていました。

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恵子さんと啓介さんは
顔を合わせれば笑顔で冗談を言い合いながら
牛の状況を細かく報連相しています。

啓介さんに
「サラリーマンのときと比べてどうですか?」
と尋ねるとこう返ってきました。

「自営業は自分次第。
人生は一度切りですから。」

ご自身のお父さんから
譲り受けた15頭の牛は
約19年で170頭に増やしました。

「0からの新規就農は大変かもしれない。
でも雇用就農であれば、
うちは働きやすい環境だと思います。」

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今年は、若い人材も育てたいという大石さんご夫妻。
農場では現在、
若いスタッフ2人が働いています。

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自然と、命と向き合い
一度切りの人生を共に全うする
仲間を求めています。

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大石啓介さん・恵子さん

肉用繁殖牛の家畜人工授精師、啓介さん(鷹島出身)と恵子さん(長崎市出身)。大学卒業・就職と同時に結婚。子育てをしながら東京・福岡で一般企業に勤め、平成15年鷹島へUターンして継業。ICTを導入した取り組みで令和3年度「ながさき農林業大賞」農林水産大臣賞・知事賞を受賞。今年の目標は「若い人材を育てる」こと。

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