元寇遺物の価値を引き上げた、新しい技術と人材。安木由美さん

元寇終焉の地・鷹島。
1980年から発掘調査が始まり、
2012年には文部科学省によって
鷹島町神崎免の沖合が
海底遺跡として初めて国史跡に指定。

鷹島沖の海底からは
2隻の元寇船が見つかっています。

鷹島海底遺跡で発掘された遺物の
展示や保存処理を行うのが、
「松浦市立埋蔵文化財センター」。

IMG_3115

IMG_3116

IMG_3099

安木由美さんは、2019年、
松浦市立埋蔵文化財センターに配属。
出土品の保存処理・管理を担っています。

IMG_3108

「以前は、水槽保存されていて
直に見ることができなかった遺物も、
水槽から引き揚げて
見ていただけるようになりました。」

IMG_3085

出土した木製品は、
そのまま乾燥させると
変形したり色が変わったり
してしまうそう。

そのため、以前は
海底から引き揚げた遺物を
水槽に入れて保存していました。

IMG_3094

IMG_3095

IMG_3102

そこで、2014年、
トレハロースによる
保存処理技術を導入。

木の変形や鉄釘のサビなどを防ぎ、
元寇遺物なら
鎌倉時代の状態により近づけて
復元できるようになりました。

保存処理にかかる期間も、
以前は10年かかった大きなものも、
今では3〜4年に短縮したそうです。

IMG_3088

安木さんが現在の仕事に就いた
きっかけは、小学生の頃。

海外の遺跡や発掘調査の
テレビ番組を見るのが好きでした。

高校在学中、宗教学の授業で
フレスコ画の絵画修復を知り、
文化財の修復保存に出会います。
奈良県の大学に進学し、専門性を磨きました。

IMG_3103

「私は、文化財の中でも
伝世品(でんせいひん)より
あまり文字資料が残されていない時代の
出土品が好きなんです。」

伝世品は、代々受け継がれてきた
美術品や歴史的遺物のこと。
一方、出土品は壊れたり捨てられたりした
当時の日用品が大半だといわれています。

安木さんは、出土品によって
人々の暮らしを再現できることにも
魅力を感じるそう。

IMG_3105

「今使っている道具も、
昔の人たちが作ったものから派生しています。
斧やお皿も今とあまり形状が変わらない。

出土品を保存処理した時に、
『これがベストな形なんだ』
って思いますね。」

2020年には、
元軍の沈没船の木製いかりを
引き揚げるクラウドファンディングも実施。
200名以上の方の支援で目標金額を達成しました。

IMG_3111

今後、沈没船を引き揚げることができれば
将来的には復元の可能性もあるとのこと。

IMG_3097

「元軍の痕跡が多く残っているのは鷹島だけ。
まだ確実に日本で作られたといえる遺物は出土していません。
応戦した松浦水軍が勝った、もしくは
無事に逃げ切ったということかもしれません。」

IMG_3117

遺物の保存処理を通じて
松浦の歴史を
解き明かしていく安木さん。

松浦の歴史も
安木さんも、
その魅力は
まだ見ぬ可能性を秘めています。 

安木由美さん

1993年福島県生まれ。家族の転勤により引っ越しのある家庭に育ち、いちばん長く暮らしたのは岩手県。高校在学中、フレスコ画を見て文化財修復に関心を持つ。奈良県の大学で文化財保存について学び、修士課程修了後、2019年に松浦市役所職員として松浦市立埋蔵文化財センターに配属。特に好きな時代は古墳時代〜平安時代。

おすすめの記事